\HP 秋の超得セール 実施中/

主に「仮想化技術」「Open RAN」を中心に解説します。
今回は楽天モバイルがなぜ安いのかという話題に関する内容です。安さのコアな技術は「仮想化技術」と「Open RAN」ですが、これ以外にオンライン中心の販売・契約方法を採用してコストを削減しています。
またモバイル事業だけの企業なら利益を出すために回線安売りは危険です。売っても売っても儲からないとなりやすいからです。儲からなければ設備投資も進まずますます契約者数が少なくなって事業が破綻します。
しかし楽天の本業は通販やカード事業なのでその利益でモバイル事業の補填ができます。
儲かっていなくても潤沢に資金を投入してどんどん設備投資を加速し、他のMNO(ドコモ・au・ソフトバンク)に「高速で追いつく」ことで事業を軌道に乗せようとしています。
だからあまり利益があがらない「安くて使い放題」というプランでも続けることが可能なのです。
まず仮想化技術について解説します。
従来のモバイルネットワークでは、専用ハードウェアとそれに一体化したソフトウェアを導入して基盤を構築することが一般的でした。一方、楽天モバイルのネットワークでは、ハードウェアの機能をソフトウェアに置き換える仮想化技術をネットワーク全体に導入しています。
楽天モバイル, 完全仮想化クラウドネイティブ モバイルネットワーク
「なんのこっちゃ?」と思いますよね。
簡単にご説明します。
従来のモバイル回線の設備は回線種類ごとに専用のソフトとハードが一体化されたものが必要でした。
4Gには4G専用のハードとソフトが必要で、5Gになったら全部交換しないといけません。

これが楽天モバイルの「完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク」ではハードとソフトを分離してバラバラに管理するようになりました。

4Gから5Gに変更があってもソフトの入れ替えだけでよく、しかも専用ハードではないのでパソコン市場という一般市場からハードを調達できます。
一般に専用の一点ものの設備というのは他に使う事業者がいないので価格が高くなります。
しかしパソコン市場は全世界にユーザーがいるので価格競争にも繋がり専用機より安くハードを調達できます。
ソフトとハードが一体化した従来の「非仮想化」の設備では通信方式が変わるたびにソフトとハードの両方を入れ替えるので莫大なコストが発生していましたが、ハードを交換するコストが大幅に低減されるため全体的なコストダウンに繋がります。
今の所楽天モバイルしかこれを採用している事業者がいないために楽天モバイルの低価格路線に繋がっていきます。
設備コストが低くなるのでユーザーの料金を安くしても利益が出るのです。
ちなみにITの分野での「仮想化」というのは以下のようなものです。
前述の通り、仮想化とはハードウエアを抽象化し、リソースを効率よく利用できるようにするための技術のことです。対してクラウドとは、ネットワーク経由で利用することができるサービスの呼び名です。
富士通, 「仮想化」とは? 仕組みやクラウドとの違いを確認しよう
Linuxなどを扱ったことがある方ならイメージできるかもしれませんが、要するに「Virtual Vox」みたいなものが仮想化です。
OSそのものをエミュレートして一つのPC上で何台も様々なOSを実行できるようにします。
上で従来のモバイル通信の設備では「専用ハード」と「専用ソフト」が必要であると述べました。
ではそれを仮想化されたPC上でエミュレートしたらどうなるでしょうか。
専用OSと専用ソフトは動いていますが、その「OS」と「ソフト」自体が仮想化されているので、使わなくなったらそれをシャットダウンして新しい通信方式の「専用OS」と「専用ソフト」をエミュレートするだけでよくなりますよね。
それが動くPCそのものは変更しなくてよいわけです。電波や通信方式に応じたセンサーなどは更新しないといけませんし、エミュレートするためのソフトの更新も必要ですし、汎用PCも古くなってきたら交換しないといけませんが、専用ハードを新しい通信方式のたびに交換するよりは安く・長く使えるということなのでしょう。
まあ実際はもっと複雑でしょうけどおそらく上で解説したようなことを大枠ではやっていると推測できます。
出典:楽天モバイルの仮想化の取り組みについて(総務省)
ちなみにわかりやすくするためにハードをパソコンと言いましたが、実際はデータセンターにあるようなすごく堅牢な巨大なコンピューターのようです。ただし一点ものではなく、ちゃんと法人向けに販売している様々な用途を想定した汎用機のようですね。
もう一つの技術がOpen RANです。(参考:楽天モバイル, Open RAN)
RANとは「無線アクセスネットワーク」のことで、これがOpenであるとはどういうことなのでしょうか。
RANとは簡単に言うと「アンテナ」と「電波情報をネットワークに繋ぐためのハード」のことです。
これは上の仮想化技術と似たような話なのですが、従来はこのRANというのは一つのメーカーがソフトとハードを一体にして「一点もの」にして販売していたんですね。
これをOpenに、つまり「いろいろなメーカーに開かれた」状態にするのが「Open RAN」なのです。
このOpen RANでは一つの「統一規格」を設けて、各メーカーがそれに合致する製品を提供します。
Open RANは、無線の送受信装置などの仕様をオープンにして、様々なベンダーの機器やシステムとの相互接続を可能とする標準化された無線アクセスネットワーク(RAN)です。
楽天モバイル, Open RAN
すると様々なメーカーの機器をつないで使うことが可能となります。規格がそろっているので、繋げやすいのです。
これが一点ものだと、よくある家電の専用コネクタではないですけど、規格が合わずに繋げられないということになります。
ユーザーは他に選択肢がないので専用機を買うしかなく、価格が高くなりがちです。他に選択肢が無いのでメーカー側に足元を見られてしまうんですね。
しかしOpen RANでは様々な選択肢の中から様々な機器を選択するので企業間で競争が起きます。仕様が公開されているので色々なメーカーが参入でき、そこに競争が生まれます。
するとRANの設備を安く調達する市場ができ、楽天モバイルの設備コストが下がります。
これをさらに仮想化で動かすので、さらに設備コストが下がります。
つまり完全仮想化とOpen RANの組み合わせが、技術的に楽天モバイルが低価格でも利益が出ると言われている仕組みとなります。楽天モバイルの安さはただの安売りではありません。
今後仮想化やOpen RANが一般化して技術が高水準になっていけば他のMNOも参入してくるかもしれませんが、今の所技術的に先行しているのが楽天モバイルですから、実績を作れば「楽天は本当にすごかった」と言える時代が来るかもしれません。
仮想化とOpen RANの組み合わせがコアな技術です