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今回もORの問題を考えます。
今回対象とするのは待ち行列理論です。
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参考にしたのは以下。
加藤豊、加藤理(2018)『例題でよくわかる はじめてのオペレーションズ・リサーチ』森北出版株式会社.
思いついた例題は以下。M/M/sモデル。
小学校で運動会を開催する。1年生から6年生の人数は合計240人とする。この小学校では防犯上の理由で保護者のみが出席できる。そこで保護者かどうかの確認のため、生徒一人に対して出席券なる券を発行し、その券を運動会当日に受付で提示することにした。
保護者の到着は1時間当たり平均120人のポアソン到着であり、受付で確認に費やす時間は平均1分で指数サービスと考える。
このとき平均待ち時間Wqと待っている保護者の平均数Lqを受付が1つから3つの場合で求めよ。
解答は以下。
到着率は
λ=120/60 = 2人/分
サービス率は
μ=1/1=1人/分
よって
a=λ/μ=2/1=2
(1)受付が1つのとき(M/M/1モデル)
ρ=a=2>1
よって受付が1つでは行列はどんどん長くなっていき、待ち時間の算出は困難である。
(2)受付が2つのとき(M/M/2モデル)
ρ=a/2=1
よって受付が2つでは行列はどんどん長くなっていき、待ち行列の算出は困難である。
(3)受付が3つのとき(M/M/3モデル)
ρ=a/3=2/3<1 であるので P0=1/(a2+a3) ここで a2=1+2+2*2/2=3+2=5 a3=2*2*2/(2*1)=4 よって P0=1/9 したがって Wq=P0*b1/b2 ここで b1=μ*(λ/μ)* (λ/μ)* (λ/μ)=1*2*2*2=8 b2=2*(3*1-2)* (3*1-2)=2 よって Wq=(1/9)*8/2=4/9分
Lq=λWq=2*(4/9)=8/9人
受付を2つ以下にするといつまでたってもさばき切れない可能性が付きまといますが、3つにすると一人、二人待てばすぐ受付を済ませることができるようです。
この例題では生徒一人に対して保護者グループ一つの出席を想定していますが、当然兄弟姉妹も同じ学校に在籍している場合もありますし、事情があって出席できない保護者もいるでしょう。
受付3つでは余裕をもって対応できそうです。
また今回は保護者の到着がポアソン到着と仮定しました。
しかし現実では受付時刻の最初と最後はあまり到着せずに、受付時間の中間あたり(例えば6時から8時までを受付時刻とすると7時くらい)に集中する可能性もあります。
とりあえず受付を3つにしておくというのはまあまあ妥当な決定のような気がします。
集中する時間帯があっても多少余裕がありますからね。
結局240人の生徒に対して出席する保護者の数は上限があります。最大でも240グループです。
するとたとえ行列ができても待っていればいつかは全ての保護者の出席を確認できます。
一度に240グループ来ても一グループ一分なので窓口1つでは4時間、2つでは2時間で済みます。3つなら4/3時間で一時間と少し。3つなら開会式には間に合わないかもしれませんが、少し待てばギリギリ入場できそうですね。
まあ最悪のケースが7時くらいに発生すると、運動会の開会時刻8時になっても受付が終わらないという可能性があるので、受付を3つにするのは妥当でしょうね。最悪のケースが7時に発生したら受付4つならギリギリ開会式に間に合うので、受付4つでもいいかもしれません。
ただ今度は7時半に全保護者が来てしまうという状況も想定されうるので、そこまで面倒みきれません。
朝の早い時間にある程度の保護者が受付を済ませることができるような何らかの仕組みが必要でしょう。
事前に当日は混雑するので早めの受付をするよう周知するとか、良い席を先着順にするとか。
あるいは開会式からプログラムが始まるまでの時間を長くとるとか。
サービス時間を短縮するために出席券をバーコードにして、機械で読み取って券の照合を速くするとか。
要は到着を分散させるか、サービスを速くするか、受付窓口を増やすか。
それで高い確率でうまくさばけるというラインを攻めるしかないでしょう。
当然昨年の受付窓口数などは判断に利用したほうがいいでしょう。
とりあえず目安として今回は受付窓口3つという答えが出ました。
…。
しかしシビアな状況も想定しておいたほうがよいでしょう。
次のような状況を考えます。
この運動会では本番開始30分前から本番開始までの間に全体の2/3の保護者が到着する。
保護者の到着は30分当たり平均160人のポアソン到着であり、受付で確認に費やす時間は平均1分で指数サービスと考える。
このとき平均待ち時間Wqと待っている保護者の平均数Lqを決定せよ。
計算していきましょう。
到着率は
λ=160/30 = 16/3人/分
サービス率は
μ=1/1=1人/分
よって
a=λ/μ=16/3≒5.3
よって窓口は最低6つ必要です。
(4)受付が6つのとき(M/M/6モデル)
ρ=a/6=16/(3*6)=8/9<1 であるので P0=1/(a2+a3) ここで a2=1+16/3+((16/3)^2)/2+((16/3)^3)/6+((16/3)^4)/(4*3*2)+ ((16/3)^5)/(5*4*3*2)≒115.51 a3=(a^6)/(5!*(6-a))≒287.68 よって P0≒0.00248 したがって Wq=P0*b1/b2 ここで b1=μ*(a^6)≒23014.01 b2=5!*(6*1-λ)*(6*1-λ)≒53.3 よって Wq≒1.07分
Lq=λWq≒5.7人
窓口を6つにすれば30分で生徒数の2/3のグループがやってきても6人くらいの列で、待ち時間1分程度で対応できるという結果になりました。
最悪開始30分前に全生徒数の240グループが到着しても、一人一分なので窓口6つで6人/分。40分ですべてのグループをさばけます。
開会式は少しオーバーするけどシビアな仮定でも6人で十分そうです。
以上まとめると、到着する保護者が分散しているなら窓口3つ。集中するなら6つ程度準備すればよさそうです。
これは前年の時間帯ごとの込み具合のデータで決めるしかないでしょう。
何のデータもないなら6つ設置するのが無難と思われます。
勘と昨年の実績でこの数とやるだけではない、ある程度の根拠になるので計算するのは無駄ではないと思います。
以上ORの練習でした。